FD部分での給電インピーダンスが300Ωより下がっているのでは?と疑問の生じた市販FM八木。
カタログの仕様を見ていてハタと気がついた。
・バンド内のSWRは悪くないが、中心周波数でも決して良くない。
・素子数に比し、ゲインは決して大きくない。
そうなのだ。
「ゲインを稼ぐよりバンド幅を広くしたため、アンテナとしてのインピーダンスが下がらない構成となり、給電インピーダンスはFD単独の300Ωより若干低くなるだけ。」だったのだ。
背景として、
・FM放送のバンド幅は広いため、
広帯域アンテナが大命題。
・マッチングを設けると耐候性に問題が生じるので、曲げ加工さえできればFD
の給電の方が給電部の実現が楽。
・4:1のバランの構成は楽なので、
下手なマッチングを構成するより300Ω/75Ω
の変換が利用できるFDを選択。
ということだろう。なるほど。
(実際に設計してみた)
FDを使用した300Ω給電3エレ八木をEZNECでシミュレートしてみた。
SWRはバンド内で2.5以下、ゲイン7.35dBi、F/B比約10dBのものができた。
F/B比の調整が必要なようだが、予想通りの結果。
「市販FMアンテナは、インピーダンスは正確には300Ωじゃないけど大体OK」てなところか。
(75Ω直接給電2エレ八木)
前回設計のものよりSWRを低く抑えたものを設置。前後長が長くないので、室内設置にも最適。
ゲインが5.4dBi程度、F/B比が10dB程度だが、ダイポールに比べると聴感上のS/Nがぐっと向上した印象。
総合的に市販の3エレとそれほど変わらない感じだし、SWR=1.023@76.1MHzであることを考えると上出来。
勿論、SWRが低い帯域は非常に狭い。
(デュアルリフレクタ75Ω直接給電2エレ八木)
ここまで来たら悪乗り (笑)。
前後長を増やさずにF/B比とゲインを上げられないものか、と実験していたら、デュアルリフレクタを思い出した。
ちょこちょこいじっていたら、F/B比約14dB、ゲインが7.45dBiのものができた。
高さが1.6m必要だが、凄い。へたにスタックで構造を複雑にするより簡単。
(総合評価)
耐候性と広帯域を重視するなら市販アンテナ。狭帯域でいいなら、2エレ八木75Ω直接給電はシンプルで小型だし性能も市販の3エレに比してもそれほど引けを取らない。
広帯域が必要ならいっそ複数本作って切替えるのも手。
いろいろと調査と設計をしてみて謎も解けたし、いよいよワクワク感が増してきたぞ (さらに悪乗りの予感)。
(方向が見えるがまだモヤモヤ)
・これまで、「高ゲインこそ命」(笑) と思ってきた。だが、それは、アマチュア無線のDXでの「聞こえないものが聞こえるようになる」という、あの究極の場面でこそ有用なのだ。ソースの音質に限りなく近づけたいと願うFMの場合、ローカル局のみを対象にし、IMDを小さくしS/Nを上げることに重きを置くべきだ。
・ゲインが低くとも目的の放送局の周波数に最適化 (狭帯域、F/SとF/Bが大きくSWRが低い) すればかなり有効であることを考えると、
マルチパスやら近隣周波数からの妨害と影響を、予想以上に受けていることを意味する。
・どんなに優れたFMチューナでも、「アンテナから同一スペクトラム内に混入しちまった抑圧不能なノイズは除去できない*」訳で、物理的に
目的放送局方向以外の信号は抑圧し、電気的に
目的周波数以外の信号に対して高SWR (低効率)=高Qとするアンテナに、できる限りしておくべきなのだ (自己満足としても)。
とすると、
単一周波数に同調する (または狭帯域) 低SWRのビームアンテナが必然であって、
広帯域・高SWR、そこそこのF/B比の市販FMアンテナでは、ごにょごにょごにょ・・・ (笑)。
*:L-RとL+Rの加算・減算時に多少なりとも除去可能?
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