今度は、SONYのST-S555ES。
ST-J75の後継機、もしかしてSONY最後のレシオ検波の高級機。
本体側では電流出力、アンプの直前で電圧に変換という、変態好き(笑)にはたまらない手法。
レシオ検波のシンセサイザー機YAMAHAのTX-900もSONYのST-J75も太鼓判を押すまでには至らなかったので、期待していた。それに、ST-S555ESについての評判もTICを除くとさっぱり見つからないので、謎のモデルだったのだ。
(入手時の状態)
1年ほど前までは動作していたが、何も受信しなくなったという個体。
前々オーナが、RCA出力できるように改造している。
開けてみると、アブラとホコリとカビが山盛り(笑)。
電源SWのランプが切れていると思ったら、このモデルには最初から電源SWのランプは存在していない・・・。
(故障の状況)
アライメントがずれているというレベルのものでなく、バンドのどこでも何も受信しない。
フロントエンドへのCV(バラクタダイオードへの容量制御用の信号)を測りながらチューニングを上下させても、電圧に変化なし。
ここだ。
(トラブルシューティング)
Q602(2SC1362)のコレクタ電圧が低すぎ。
2SC1362に仕様の近い手持ちのTrに交換するも、変化なし。
ということは、Q601(2SK30GR)の故障か・・・。
部品の在庫から探し、Q601を交換すると、一発で動作。
(不可解な部品と動作)
Q601の交換で動作するようになったが、TP3での1.8Vへの調整を試みるも、RT601を回しても0.8Vのまま全く動かない。
基板上でRT601を測定すると、数100kΩを示す。1kΩのVRだから、パラレルに入る回路と合わせても1kΩ未満でなければいけない。
外して両端を計ると、無限大。そう、数MΩでもなく、どの端子間も無限大。
ところが、このRT601を交換すると、TP3の調整はできるようになったが動作しなくなったのだ!CVの電圧も30V近辺に張り付いたままチューニングに同期して変化しない・・・・。
交換したVRの足を上げて導通なしの状態にすると、何事も無かったように動作・・・。
設定周波数に対してリニアにVCを発生させられれば、各部の電圧が少々おかしくても、実際の回路が回路図と異なっても問題ないが、一体このRT601の位置付けは?
(その後の展開)
ネットで上記の不可解な動作を質問してみたら、「2SK30GRでなく2SK30を使ったのでは?」と回答あり。
大当たり。「手持ちで当座の修理」のミス。後でGRランクを購入して様子を見よう。
(その他の部品交換)
フロントエンド: C104/C106(100uF/16V)
コンポジット信号アンプ: C154/C155(220uF/16V)
MPX: C204/C205(470uF/16V)
AFアンプ: C218/C219(220uF/25V)
V-Iコンバータ: C223/C224(470uF/25V)
→C223の様子がおかしい。爆発(圧力解放弁の解放)はしていないようだが、電解液が上部に浸み出たような跡。外してみると、なんと側面に穴が!これまで、真空管ラジオのペーパコンが爆竹のように(笑)破裂したのを見たことがあるが、電解コンの側面破裂は初めて。一体、何が起きたのだろう?
(期待の音質-1)
す、凄い。電解コンの交換の影響がどの程度あるのか分からないが、奥行き感の表現と、聴感上のS/Nがいい。
ST-J75もS/Nがずば抜けていたが、このDNAをちゃんと引き継いでいるようだ。
BGMを鳴らしながらのアナウンサーの話も、
「音楽は後ろ、声は前」の距離感が凄い。
見通しの良さは素晴らしいが、ボーカルの子音が若干きつい。
音が冷たい感じはSONYのPLL検波やKENWOODのパルスカウント検波の音に似ている。
低音の音離れも良くなく、ベースラインが余り追えないし楽器が見えてこない。エージング後に期待。
(期待の音質-2)
時間が経つにつれて、低音の不自然さと高音のきつさが取れてきた。
民放で音楽がかかっていなかったので、NHKのクラシックをかけたときのこと。
楽器の「響き」とはこれだ ! と言わんばかりで、
バイオリンは、弦ではなくボディが鳴っているのが分かる。
スピーカの裏側で楽器が鳴っているような実在感がある。
これまでシンセサイザー機に感じていた「息苦しさ」に対する嫌悪感もすっかり吹き飛び、只々脱帽。
これぞSleeper。
(ACT (Audio Current Ttransformer))
ACTケーブルの効果が知りたい。アンプ直前で電圧変換することにより、何か違いが感じられるのだろうか。
部品を手に入れたらケーブルを自作してその真価を試してみよう。
[5回]